
「戦慄の閉鎖病棟」は、富士急ハイランドにつくられた、ウォークスルー型のお化け屋敷です。
全長500m、最長距離としてギネスに認定されました。
発端は、富士急ハイランド内の、つかわれなくなった宿泊施設を活かし、お化け屋敷をやりたい、という施主の依頼でした。
さて、これをどうやってお化け屋敷として料理したものか。
作業は、「恐くするって、どうすればいい?」を考えることから始まりました。

多くの場合、プランニングは専門の担当者が行います。
しかし、今回つくるのは「お化け屋敷」という、だれもが一度は体験したことがあるような施設。仮に、お化け屋敷でなくても、「怖い思い」をした経験は誰しもあるものです。
そこで、営業担当、設計担当、施工管理担当など、職種にかかわらず、全員でプランを考えることにしました。
どうせなら、思いっきり怖がってもらいたい。
まずは、全体のシチュエーションの設定が必要です。
怖い建物ってなに?
遺跡?トンネル?宿泊施設?etc…。
クライアントとも協議を重ね、普通であってもミステリアスな、病院というシチュエーションに決定しました。廃病院となれば、怖さ倍増です。恐怖感をあおるため、あえて、何かがあったとおもわせるような「閉鎖病棟」というネーミングをしました。
お化け屋敷のストーリーは、霊安室に行ってもらうまでの物語です。お客様に楽しんでいただくために、最初にガイダンスを兼ね、映像とスモークなどの演出を組み合わせたプレショーを体験していただくことにしました。
演出、タレントの仕込みなどもムラヤマで行いました。
目からも耳からも、手や足からも恐怖が染み込むように。
五感で恐怖を感じていただくため、施設内を暗くし、視覚を当てにできない状況で体験をしていただくことにしました。
わざとらしい音や直接耳に入る音は一切使わず、天井裏で反響させるなどして間接的に音が漏れ聞こえてくるようにし、あえて違和感のある音(不協和音)を用い、「不快さ」を感じさせる演出としました。
お化け屋敷では、実際に「何かが起こる」動の部分だけでなく、なにかが「起こりそう」な静の部分を設けることで、いっそう心理的なドキドキを煽ることができます。また、コストの削減にもつながります。
お化けを演じるアクターも、1フロアにひとりとして、あえて何も起こらない状況が長く続く状況もつくりだしました。
クライマックス(霊安室)ではお客さまが数珠繋ぎになるのを防ぐために、演出として物理的にドアを閉め、前の人が出るまでドアを開かないようにしました。
ただ開かないだけなのですが、これが「出られない」恐怖となってクライマックスに相応しい仕掛けとなりました。
恐怖のあまり途中でリタイアするお客様にむけ、チキンウェイも多めに設置しました。
「戦慄の閉鎖病棟」は、もともと宿泊施設だった建物を使用しているため、かなりの広さがありました。建物全体を使うと演出に莫大な金額がかかるため、
1フロアで使用する部屋を3つか4つに限定し、ほかには立ち入ることができない演出として、全体コストを調整しました。
病室を演出する機材も、閉鎖された本物の病院から使用済みの器具を購入してリアルさを追求、消毒液を全館にまき散らして臭いをつけ、病院らしさを追求しました。

企画から施工、映像やアクターの演出に至る細部までのすべてを担当した戦慄の閉鎖病棟。
ゼロからすべてを生み出すことは、手間もかかり、大変な作業の連続でもありました。
しかし、その分できあがったときの充実感は何にも代え難いものとなり、担当者にとっては思い出に残る
楽しい仕事となりました。